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皆殺し文学はやめだ

by mouthes

風立ちぬ

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誰にも、わからない。
だけど、しあわせ。


「見ているだけで楽しい」とか「共感できる」とかではない映画だったなあ。
でもそれも含めて、余すところなく「男子」だった。
私が日頃感じている男子のいいところも悪いところもほとんど描かれていた。

あの視野の狭さも、好きなものに夢中にはなって興味のないものは理解すらできないところも、女の子のことなんて全然理解してないところも、
思いっきり「男子」だった。
相互理解なんて親友とすらできていない、コミュ障甚だしいこの天才。
全く魅力的な主人公としては不出来な堀越次郎。
だけど、なかなかどうして彼に恋する気持ちだけはわかる。
だって王子様なんだもの。

菜穂子もたいがい夢見る少女だけど、
彼らがいいのは、
自分のしていることに一切言い訳をしないところ。
それは潔いよ。
昨今のナイーブ男子は言い訳ばっかしてるもんね。
繊細さを傘にきて隙あらば甘えようとするもんね。
その最たるものがミスチルであり浅野いにおですが、
やっぱり宮崎駿は年季が違うね。
自分が好きなものしか目に入らないことに腹くくってる。
あれで堀越次郎が少しでも「僕のことわかってくれるよね、許してね」なんて言おうもんならクソッタレだと思うけど、
最後までまったく言わなかった。
夢見る少年で終わらなかった。
夢を見終わった後も死ねない少年として生き続けるんだ。
そこに喜びがあるかは疑問だけど、
隙あらば「生きてる意味って本当はないよね?」ってわかりきったことを覚悟もなくおずおず聞いてくる甘ったれよりはよっぽどかっこいいです。
生きてる意味なんてなくても死ねませんから。
心に熱いもののないことすら人のせいにしてんじゃねー!

好きなものしか見えてないし、
正義っていうより傲慢で鈍感なだけだし、
好きなものを追いかけて妻も飛行機も財産も失った「男子」は、
それでも生きていく。
そうなんすね、駿先生。
by mouthes | 2013-10-12 03:42