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皆殺し文学はやめだ

by mouthes

岩明均を誉めたい

夜中に突然岩明均先生を称賛したくなった。
キーボードに向かうと歯止めが聞かなくなるからケータイからかちかち。

「寄生獣」「風子のいる店」など数々の傑作、良作を生み出してきた岩明均を知らないなんて、そんな人はいません。
いないというつもりで話をします。

「人間」を描くことにかけて、この方の誠実さは突出しています。
それはこの方の主役がいつも「人間社会」であって「人間」はあくまでその中で役割を果たす機能に過ぎないからです。
そこには客観というよりも、ある意味で倫理のない観察眼が働いて、
「善し悪し」ではなく徹底して「有るか無いか」が問われている。
作者はどんな人物も状態も、つぶさに観察し、誇張したりおとしめたりすることなく表現します。
そこから見えるのは、感情ではどうにもならない事柄に対して、感情で立ち向かっていくしかない人間の姿なのです。
太刀打ちできない事実を前にして苦しむしかない、人間の限界。
だからこそ岩明漫画の人物が抱える感情は、乾いていても重みがあり、冷めているように見えてこの上なくたぎっている。
その感情の有様は、共感や共鳴というにはあまりに生々しい。
中島敦の「山月記」や山田太一の「爾太郎さんの話」、そして桜井鈴茂の「終わりまであとどれくらいだろう」がそうだったように。


だからもうたまんないんすよ。凄すぎる。岩明先生は凄すぎるぜよ。





そういうこと描くのは近代以前まで文学の役目だったはずですが、
いま、俄かに主題が逆転しているんです!
文学では直接的に感情を綴る「ケータイ小説」が持て囃され、
漫画では次々と起こる出来事に人物が翻弄される「スペクタクル物」が生き残るようになってきているんです!
「蒼天航路」や「ヒストリエ」、広く捉えれば「レモン・ハート」や「シガテラ」、「闇金ウシジマくん」だってそのひとつ。
少年漫画全般はいわずもがな。
そうかそうか。



まあ、「スペクタクル」至上主義というのでもないし、
少女マンガの「青空エール」なんかも大好きです。
河原和音先生は人間の感情を切り取るセンス、それを描くことにかけては、天才的です。
何たって無垢で厭味がない。
あんな淡い気持ちをよく表現できるな、と毎月感嘆しています。



まあ少し話が逸れましたが、岩明均先生が私の中で特別なのは、そういうわけです。
特上の感激が岩明先生の漫画にあるのは、そういうわけなのです。

おやすみなさい。
by mouthes | 2009-10-13 01:19 | moments!