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皆殺し文学はやめだ

by mouthes

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風立ちぬ

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誰にも、わからない。
だけど、しあわせ。


「見ているだけで楽しい」とか「共感できる」とかではない映画だったなあ。
でもそれも含めて、余すところなく「男子」だった。
私が日頃感じている男子のいいところも悪いところもほとんど描かれていた。

あの視野の狭さも、好きなものに夢中にはなって興味のないものは理解すらできないところも、女の子のことなんて全然理解してないところも、
思いっきり「男子」だった。
相互理解なんて親友とすらできていない、コミュ障甚だしいこの天才。
全く魅力的な主人公としては不出来な堀越次郎。
だけど、なかなかどうして彼に恋する気持ちだけはわかる。
だって王子様なんだもの。

菜穂子もたいがい夢見る少女だけど、
彼らがいいのは、
自分のしていることに一切言い訳をしないところ。
それは潔いよ。
昨今のナイーブ男子は言い訳ばっかしてるもんね。
繊細さを傘にきて隙あらば甘えようとするもんね。
その最たるものがミスチルであり浅野いにおですが、
やっぱり宮崎駿は年季が違うね。
自分が好きなものしか目に入らないことに腹くくってる。
あれで堀越次郎が少しでも「僕のことわかってくれるよね、許してね」なんて言おうもんならクソッタレだと思うけど、
最後までまったく言わなかった。
夢見る少年で終わらなかった。
夢を見終わった後も死ねない少年として生き続けるんだ。
そこに喜びがあるかは疑問だけど、
隙あらば「生きてる意味って本当はないよね?」ってわかりきったことを覚悟もなくおずおず聞いてくる甘ったれよりはよっぽどかっこいいです。
生きてる意味なんてなくても死ねませんから。
心に熱いもののないことすら人のせいにしてんじゃねー!

好きなものしか見えてないし、
正義っていうより傲慢で鈍感なだけだし、
好きなものを追いかけて妻も飛行機も財産も失った「男子」は、
それでも生きていく。
そうなんすね、駿先生。
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by mouthes | 2013-10-12 03:42

地獄でなぜ悪い

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星野源の歌はどんどん強くなっていくなあ。
サビに向けて高まって、響き渡るファンファーレ感に泣いてしまうよ。
憧れるほどの強さとユーモアがそこにある。

最初に星野源を聞いた時の印象は、「うさんくさい」だった。
聴いていて、歌に人見知りされてるような疎外感があった。
だって、こんな若いのに、おじいちゃんみたいなことばっかり言うなんて変だもの。
意味が曖昧な単語ばっかり使って、けむに巻かれているようでいらいらするんだもの。

でも自分の好きな人たちはみんな星野源好きだから、「良さがわかりたいなぁ」という一心で聴き続けた。

そしたら好きになった。
しかも、いままで「うさんくさいなあ」と思っていたところはそのままに。
この人は、曖昧で自己愛の強い世界に生きている。
そして、作品の中でそれがちっとも薄まらない。
それが珍しい。
普通、人前に出たら薄まるよ。
人に話すことで自分の考え方がより具体的になったり、自己愛なんか表に出して笑われるだけで大ダメージだよ。
そうやって、自意識が薄まって、複眼を手にいれて、薄まりながらも深い共感の世界に踏み込んでいけるようになるのが、「普通」だと思う。
それがメインストリームで行われていることだろうと思う。

でも、この人は薄まらない。
正確には、薄まらずに出てきたのがファーストの「ばかのうた」だ。
自己愛と憧憬と苦しみのつまった、すごく繊細で図々しい歌たち。
曖昧な単語は曖昧な実感のせいだ。
それは嘘ではない。
曖昧なものを具体的に理解することはできない。
論理は感覚に先立たない。
曖昧にしか感じ得ないものをそのまま表に出す。
それがこの人の誠実さだということに気づくのに、すごく時間がかかった。

ソングライターズというNHKの番組で、
「よくあるうたい文句で、『君と僕はひとつだ』と言われると、『ウソつきっ』と思ってしまうけど、『君と僕はふたつだ』と言われると、『そうだよな』と思う」
と語っていた星野源の、
この自意識の強さ。

わかりにくくてめんどくさくて不親切、
それが自意識。
私たちの病。
薄まらない共感がここにある!

でも、枚数を重ねるごとに、星野源は自意識から這い出てきた。
どんどん人の中に入って行くようになった。
自意識の強さはそのままに、自分以外の物語を歌い始めた。
そんな「布団」や「化物」がだいすきだ。
それは紛れもない強さ。
「ふたつ」を超えていく作業。
自意識の地獄から逃れる活路だ。
自分の不実さや嘘やごまかしに過剰に傷つきながら、
そこに留まっていじけないことを宣誓する、
最高の開き直り。

「嘘で何が悪いか!」

この先の変化で、景色はどんどん変わるだろう。
それが楽しみだ。
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by mouthes | 2013-10-02 15:44