皆殺し文学はやめだ

by mouthes

デタッチメント 優しい無関心

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圧巻のトニー・ケイ。
「私に思想はない」という言葉がどれほど真実かはわからないけど、
この人の人間を見る目は、やさしい。

トニー・ケイの作品は、ほかに「アメリカン・ヒストリーX」という映画しか観たことがない。
あの映画もすごかった。



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”ネオナチのカリスマ”だった兄をもつ少年が、黒人の校長にある課題を出される。
それは自分の兄についてのレポートを書くこと。
タイトルは「アメリカン・ヒストリーX」。
人を殺して入った刑務所から出所した兄の変化を読み取ることで、
アメリカにある差別と暴力が見えてくる。


当たり前のようにある差別、搾取と排除。
自分の目線で相手を理解することの難しさ。
一人で生きているつもりが周囲に守られていて、守りたかったものを守れない苦しさ。

こんなに人の心をえぐるのに、この映画は誰にも感情移入していない。
すれ違うことや、傷つけてしまうことに理由はない。
みんなわけもわからず生きて、わけもわからず死んでいく。
もっと良くなりたいと、それだけを願って。



「デタッチメント」の深度は、「アメリカン・ヒストリーX」のさらに上を行く。
もっと良くなりたいと願っているのは、どんな生い立ちのどんな年齢の人でも変わらない。

主人公、ヘンリー(エイドリアン・ブロディ)は倒れかけた学校を再生するための臨時職員として雇われる。
彼が持つのは英語の授業だ。
生徒たちとぶつかるのではなく、なだめすかし、言い諭しながら、自分自身と向き合わせる。
爆発しそうな感情は、誰かにぶつけて解消するべきじゃない。
自分と向き合うことで、「今よりももっと良くなれる」、そう信じてる。

同僚とも、家族とも、生徒とも、深入りはしない。
深入りすれば傷つくし、傷つけられる。
何かを期待すれば、裏切られたときに相手を呪ってしまう。
愛そうとすれば憎んでしまう。
「今よりもっと良くなる」ためには、深入りせずにできることだけをすればいい。
期待も失望もしないやり方が、継続には必要だと信じている。

ヘンリーは、自分の感情を語らない、語ることができない。
彼がかろうじて語ることができるのは、仕事のことだけ。
そして仕事について語ることで、彼は自分自身の心の奥を見つめることになる。



この映画といい、「BIUTIFUL」といい、
言いたいことが言えないということは、なんて悲しいんだろう。
人を愛したいのに愛せないということは、なんてさびしいんだろう。
そんな中で心が触れ合うということは、こんなに暖かく輝いているんだろう。
血と、痛みと、悲しみが、やさしさを指し示す。







今日も、がんばれよって、言ってるよ。
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by mouthes | 2014-01-26 17:12 | Movies&Books