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皆殺し文学はやめだ

by mouthes

Lie lie Lie

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中原俊監督の映画は、「気の弱い人がよくしゃべる映画」だなあと思った。
『12人の優しい日本人』も『桜の薗』も。
そこには「話を聞いてくれる人」の存在があって、
「なんかこいつの前ではとりつくろえないんだよな」っていう気の緩みがある。

どの映画も、
人間の本質が暴かれたり、
強烈な個性が見せつけられるわけではないけれど、
人間たちが関わりあった時の化学反応がかっこよく描かれてる。
謙虚で饒舌、緻密にして大胆。
ほんと、こういう映画をもっと観たいよなあ。

たとえばインテリとか、サブカルとか、
今のご時世に用いられるとちょっとキナ臭い言葉がある。
だけど『Lie lie Lie』が撮られたころには、
こういう言葉ってもうちょっと気取ったいい言葉だったんじゃないかな。
人をカテゴライズしてこき下ろすのもいいけどさ、
そういうことすると面白さがダメになっちゃうんだよ。
自意識と自己愛と、それにまつわる嫉妬と嘲笑に耐えられない言葉だったのはしかたないけど。
ほんとは特権意識も自尊心もないのにね。

そういう煩悶に、この映画ははっきり答えを出してる。

「一番臭うのは文学ってやつですよ、先生。
 臭くて仕方ない。生きるための言い訳をダラダラと・・・人間が臭うんですよ」

インテリでサブカルでアウトローな魅力がたっぷりつまった、
自意識にとらわれない物語。
中島らも原作と知って納得だったな。
人間が強くてかっこいい。
by mouthes | 2013-09-07 05:24 | Movies&Books