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皆殺し文学はやめだ

by mouthes

UPLINK 6/7 豊田道倫トークショー・曽我部恵一

海に行くような格好で夜の渋谷を歩き、
確実に浮いていたなかでUPLINKに辿り着く。

ただ、会場に着くとたいして違和感もなく、開演を待つ。

そかべさんがかっこいい。
豊田さんは初めて見た。
実は音楽も聴いたことない。
ただ方々で絶讃の声だけは聴く。

トークはイマイチ弾けなかった。
とにかく笑ったところもたくさんあった。
それはふたりの呼吸というか、会話の隙間の雰囲気がすごくおかしかったというのが大きい。
きっとそかべさんと豊田さんが二人でダラダラ話してるのを盗み聞いた方が楽しんだろうなあと思う。
いよいよ豊田さんのライブ。ドキドキ。



なんだか、とても怖かった。
怖い人だなぁと思った。
男の人だ、と思った。

たぶん男の人がCoccoを聴いて「女の人怖いなぁ」と感じるのと同じような感じで、
「男の人、怖いなぁ」と感じた。
この人を男の人が絶賛してるのも怖かった。
そこに脳内ニューヨークを見ているというか。
私は女だし、こういう男の人のどうしようもなさがごろっと横たわっている姿を見せられると、ただただ怖い。
自分にはなす術がない、と思う。
あと、この人は私なんか見ていない、とも思う。

そんな感想を兄と話したら、兄の言葉で怖さの謎が解けた。

「目の前のことを、見えたまんま歌える感じがカッコよく見えるんだよね、男には。
それも楽器や歌の上手い下手じゃなくて、カッコつけでもなくて。」

私が怖かったのは、その距離感だ。
ゼロ距離で私自身を見られること、そこに救い難い断絶があるってこと、
そこをまっすぐに見て歌にされるなんて、
私には耐えられない。

兄は「ダニエル・ジョンストンみたいなこと」と言っていたけど、
英語なら私は距離が保てるけど、
日本語で正面切ってこられると物怖じしてしまう。

Lantern Paradeなら怖くないのに、なんで豊田さんだと怖いんだろう。
風体かなぁ。
免疫かなぁ。
メロディのあるなしかなぁ。
いや、きっとランタンさんと世界の間に距離があるからだろうなあ。
あまりにもひどい惨状のさなかには、ランタンさんはいない感じだろうなあ。
精確に、しかし遠くから目を注いでる。
豊田さんはとにかく近い。
豊田さんの歌は、怖いくらい当事者だ。
誰にも関係のない日常の当事者。
それは、すごくさみしいことだ。
なぜこの人に自分は関係ないのだろう。


そかべさんの歌は、ありのままの中でそかべさんの感情がファンタジーになって息づいている。
自分と世界の間に隙間がある。
新聞記事のようにありのままが記されていても、そこに感情や生活を感じさせてくれる。
そこにはどんな歌でも感情移入させる魔法がはたらいていると思う。
オザケンの系譜だなぁと思う。



ロバート・アルトマンとロブ・ライナーの違いか!


謎が解けたのでくらった恐怖を家に持って帰らないで済んだ。
よかった。
by mouthes | 2013-06-07 22:20