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皆殺し文学はやめだ

by mouthes

パッチギ!

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面白かったー。
面白い面白いとは聞いていたけれどやっぱり面白かった。
あたしは、井筒監督という人はよく知らないしよく知らない中でもあまり好きじゃないんだけど、
映画は面白いね!!!!
「ゲロッパ!」もすごく好きだったし。


人情もののくさみとか大団円特有の大味なところが無いとは言わない。(それがあるからこそあたしはこの映画が好きなのだし)
しかしね、それを補って余りあるユーモアと愛嬌!
そんで最初から飛ばし気味の物語のスピード感が落ちないのは、間違いなく監督の技術。
素晴らしい!素晴らしいエンターテイメント!


また、「歴史」ってもんがあって「物語」があるんだという堅固な信念が感じられる。
これを言いきってもらうのは爽快だね。
そりゃそうだよね。
昨日まで何もなかったところに出来上がった人間がぼんと生まれるわけじゃないんだから。
好きになったその子が出来上がるまでの歴史があって、
その子を好きになる自分が出来上がるまでの歴史がある。
たいていは、無視できないこととして。

家族とか民族ってことを考えないでいられるのは、結構おめでたいことだと思う。
良い意味でも、悪い意味でも。
私が、そうだし。
私は結構おめでたい。私の周りもなかなかおめでたい。
おめでたいっていうのはだいたい愉快なことだ。

家族と家族が一緒になるっていうのは、古いとか新しいとか関係なく、事実だから。
家族はそのままその人の歴史だし、
歴史を乗り越えるのは、愛さえあれば簡単だけど、愛は簡単じゃないからね。
受け入れたり、変化したりすることは、いつだって苦しい。
無知でいられたら苦しみはないけれど、それは愛じゃない。


これは、間違いなく「愛」の物語。
そして日本最高峰のエンターテイメント。




あてにならないし実体もないようなAmazonのレビューに対して腹立ててもしかたないんだけど、
ああいうのって学校や会社で言葉にはされないけどみんなが共有してる空気みたいなところあるよね。
だから腹が立つんだけど。
「よくある日本映画」とか「在日の人はこんなに乱暴者じゃない」とか何考えてんのかな、と思うよ。
だいたい「よくある日本映画」って何と比較してそんなことを言ってるんだろう。
「踊る大捜査線」とか「恋空」とか、ああいうものと同じだといいたいんだろうか?
起承転結が明快だから?わかりやすい大団円は読める結末だから?
もしそうだとしたら、映画なんて観ずにギリシャ神話でも読んでろ!
まったく、エンターテイメント性とか話の作りにばっか気を取られて全然映画なんか観てないんだから。

この映画の魅力は、そこに描かれている人間と肉迫した強さなのに、それがわからないなんて!

監督自身は、在日だからどうだこうだということは全く考えてないと思う。
血気盛んな高校生って「よくある」題材でしょ?
この物語の中で、「在日だから凶暴だ」とか「在日だけど頑張ってる」とか、そんな描写一切ないじゃん。
日本人にしたって「日本人だから気弱で優しい」とか「日本人だから排他的」とかそんなこと言ってないでしょ。
この映画には特別な話は一つもないよ。
差別や恋や喧嘩に特別なところなんてなんもない。
全部人間の暮らしの中にあるものだよ。
そこに何を見出すかで、あなたが社会をどう見ているのかってことははっきりしちゃいますけどね!!!




あたしは、この映画を観て、
差別意識や国交の歴史は確かにあるし、ちょっとずつ語られているけど、
その凄惨さとか、うわべだけの和解ばっかり語られていたんだなーと思った。
差別はあって、している人とされている人がいて、
でもされている人たちがいつも泣いて自分を憐れんで過ごしていたわけじゃないということは、知らなかった!
みんながみんな、常に自分は差別されてる、被害者だなんてうじうじ思って暮らしてるわけないよね。
誇りも持ってるし、力もあるし、ずる賢いところもあるし、下らない笑いもたくさんある。
だから共感もできるし、友だちにもなれる。
ただそれぞれ背負っている歴史や家族があるのは無視できないし、「歩み寄る」なんて差別と変わらないんだよなあ。
理解できないもんとか、受け入れられないもんを受け入れるためには、
「歩み寄る」なんてもんじゃだめなのよね。

どーーーんと体当たりして、パッチギをかまさんことには!!!


ベタで王道、痛快にして爽快。
良い映画だった。






***

尾上寛之さんと江口のりこさんは最高です。
間違いなくいい役者だ、と思っていましたが、天地がひっくり返っても良い役者だ、と確信しました。
by mouthes | 2011-02-07 17:19 | Movies&Books